クレディアの貸付債権が信託譲渡されている問題点(司法書士 小 澤 吉 徳)
既にご案内のとおり、クレディアの貸金債権の一部は証券化されており、新生信託銀行に信託譲渡されております。この点から、債権の帰属についての問題があり、また、その貸付債権が利息制限法所定の金利に引き直して計算した場合に過払い金が発生していた場合の請求先の問題が浮上します。
そもそも、クレディアと利用者の問題であれば、話はシンプルです。つまり、制限利息に引き直してなお残高があれば、それはクレディアに対して支払われるべき債務となり、逆に過払い金が発生していれば、クレディアの再生手続に債権者として参加することになる・・・わけです。もちろん、一般の再生債権となってしまえば、支払われる額は僅少なものにならざるを得ませんので、これについては、何らかの保護をすべし・・・というのが私たちの主張であるわけですが。
この証券化され、新生信託銀行に信託譲渡されたクレディアの貸付債権について、どのように考えれば良いのでしょうか・・・誤った理解もあるかもしれません。お読みになった方におかれましては、ご自身で文献にあたったり、専門家の意見を聴くなど検証を必ず加えていただきますよう、予めお願いいたします。
信託譲渡というのは、信託法という法律によって定義されています。ご案内のとおり、この信託法は大改正されたばかりでありますが、クレディアの貸付債権の信託譲渡につきましては、旧法の適用となっています。
信託法には第1条にこう規定されています。「本法ニ於テ信託ト称スルハ財産権ノ移転其ノ他ノ処分ヲ為シ他人ヲシテ一定ノ目的ニ従ヒ財産ノ管理又ハ処分ヲ為サシムルヲ謂フ」。古い法律ですので、カタカナ表記になっておりますが、肝は、(新生信託銀行に)財産権を移転し、財産の管理・処分を任せる・・・ということでありましょう。従いまして、そもそも、信託譲渡された貸付債権には、クレディアには何ら管理処分権限はない・・・・というのがベースになろうかと思われます・・・・
信託譲渡により、(信託譲渡された一部の貸付債権に限っては)管理処分権限は、クレディアから新生信託銀行に移転している・・・・ということでありますが、では、なぜ、利用者である、クレディアの顧客には、新生信託銀行からの請求がなされていなかったのでしょうか。延滞した場合に、新生信託銀行から督促を受けなかったのでしょうか。そういう顧客は存在しなかったはずです。
これは、クレディアと新生信託銀行の間には、クレディアの貸付債権の信託譲渡契約のほかに、クレディアの貸付債権についての回収事務の委託契約が取り交わされているからであります。すなわち、新生信託銀行に移転したクレディアの一部の貸付債権は、信託契約により、その管理処分権限は新生信託銀行に移転されたわけですが、同時に、信託事務の一部である回収事務をクレディアに委託するという契約を締結することによって、従前どおり、顧客に対する回収は、クレディアが行う・・・・という外形を維持しているのであります。
ここまでで、この問題に精通されている法律家の皆様は、「あれ?でも、貸金業規制法24条2項の通知は???」と思われるでしょう。そうです。貸付債権が譲渡された場合の顧客への通知義務規定であります。なぜ、クレディアから新生信託銀行に貸付債権が信託譲渡された際に、その旨の通知がなされなかったのでしょうか。そして、監督官庁である金融庁はそれを知っているのでしょうか・・・・
この点につき、西村総合法律事務所の編集による「ファイナンス法大全下巻」には、次のような指摘がされています。『貸金業法24条2項の規定は「不意打ち的な履行請求」からの債務者の保護であるが、この書面交付がされなければ果たしえないというわけではない。 つまり、貸付債権の譲渡に際して、債務者対抗要件は具備されず、か
つ、債権譲渡人により従前どおり貸付債権の管理・回収が継続され、債権譲渡人・債権譲受人間において約されている場合には、債権譲受人により「不意打ち的な履行請求」が行われる可能性を極力排除しているのであるから・・・・24条2項書面の交付が留保されることは、必ずしも当該規定の趣旨に反しない・・・・』
新生信託銀行のような銀行が、このような重要な問題につき、金融庁の意向を無視するとは思えません。とすれば、上記のような解釈(もちろん他にもこの通知について不要だとする論考はあります。代表的なものとして、月刊消費者信用2002−4「資産流動化と貸金業規制法第24項第2項の適用について」片岡総合法律事務所)に基づいて、敢えて混乱を防ぐために通知をしなかったと理解できるのではないでしょうか。
しかし、クレディアが民事再生を申し立てた現在、そして、その債権の帰属が判然としない現在、上記のような運用が果たして妥当なのか・・・疑問が残るところです。
「あれ?」と思われる実務家の皆様多いと思います。クレディアがいわゆるサービサーの役割を果たしているのは理解できても、基本的な管理処分権限が新生信託銀行に移転しているのであれば、裁判では新生信託銀行が当事者になるのでは???という疑問です。
この点については、このような事情になっているようです。もちろん、私は、クレディアと新生信託銀行との間に取り交わされている300ページ以上にも及ぶとされている英文の信託契約の内容は存じ上げませんが、「法律家による債務整理が開始した債権については、信託の一部解除がなされるという契約内容になっている」ということであります。
従いまして、私たち法律家が、これまで新生信託銀行を当事者として和解を締結したことは一度もなく、過払い訴訟の当事者になることはないわけであります・・・もちろん、クレディアの顧客は、自分の債権が新生信託銀行に信託譲渡されていることなど知る由もなく、雲の上で、投資家に・・・・・と言ったら言い過ぎになってしまうでしょうか・・・
それでは、いわゆるグレーゾーン金利は、最終的には誰の手に渡っていたことになるのでしょうか。一部のクレディアの貸付債権は、新生信託銀行に信託譲渡され、その管理処分権限は新生信託銀行に移転されています。となれば、常識的に考えても、新生信託銀行が取得していたということになりましょう。そして、それは最終的には投資家に・・・とうことになるのでしょう。
であれば、新生信託銀行という銀行が事実上、利息制限法を超過した違法な金利を取得し続けてきた・・・ということにはならないのでしょうか(もちろん違法だと知りつつ)。これは大きな問題のように思います。もちろん、新生信託銀行に信託譲渡された時期以前のグレーゾーン金利については、新生し信託銀行が取得していたことにはなりませんでしょうが・・・
ここまで記した私の理解が間違っていないのであれば、新生信託銀行は、過払い請求の請求先となりうる・・・のではないでしょうか。




